イメージが湧きにくい言葉かもしれませんが、書道のかなの世界には、「変体がな」というものが、どっしりと、しっかりと今も存在しています。古くからあるものですが、これからも受け継がれて光を放って行く、素晴らしく貴重な文化であることは間違いありませんから、書を学ぶ上で、深入りせずとも、ある程度知っておくことをおすすめします。
上の画像①が、先日の「かなの種類」の投稿でご紹介した「生そば」の画像です。お蕎麦屋さんに掲げられている看板を思い出す方も多いと思います。そうなんです。変体がなは、意外と私達の身近にあり、しかも読めていることが多いのです。
もっと沢山紹介したいのですが、長くなるので、いつかの機会に取り上げられればと思います。
下の画像②が、普段私たちが使っている、漢字とひらがなで書いた「生そば」です。
ここで、とても大切なことを申し上げたいと思います。
画像①と画像②をご覧になって、感じる違いです。どう違いを感じるかは、人それぞれで良いと思います。大切なことは、「違う」と感じて頂けることです。
ほかの例では、「美しい心」と書く場合、「美しい心」か、「美しいこころ」か、または「美しいココロ」かで、表現はずいぶん変わって来ます。もっと言えば「うつくしい心」、「うつくしいこころ」などが考えられます。
書の表現には、こういった文字選びの楽しさもあるのです。
話を「生そば」に戻します。
下の画像③をご覧ください。
画像③の上部が、変体がなの「そ(楚)」。下部が字源の「楚」です。
画像④から、「そ」の変体がな「楚」を確認できると思います。また、「楚」以外にも「曽」「所」「處」が「そ」の変体がなとして使われていることがわかります。
上の画像⑤の右側が、変体がな「者(は)」+「゛(濁点)」を表したもの。左側が変体がなの「は(者)」と、字源の「者」です。
下の画像➅から「は」の変体がな「者」を確認できると思います。また、「者」以外にも、「波」「八」「盤」「半」が、「は」の変体がなとして使われているのがわかります。
このように、書道の「かな」と言っても、奥の深いものです。でも、物怖じせず、「変体がな」って言うのもあるんだな~、って感じで考えてもらえればと思います。
そして、書のかなの作品を制作する方々は、したい表現に合わせて、どの変体がなを選ぶか、あるいはひらがなにするかを考えておられることも、知っておきたいところです。
長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
次回は、以前の投稿「字体」の中で登場した「書体」について触れてみたいと思います。
お楽しみにしていて下さい。
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